平成17.18年度
八王子市教育委員会研究協力校
特別支援教育活動の推進
学習支援方策の工夫
八王子市立打越中学校
平成19年1月22日
1 研究のねらい
生徒の能力、障害の程度は千差万別であり、個に応じた適切な個別指導を行うことが重要である。
また、学校教育の中心は毎日の授業であり、分かる喜びを実感させることで意欲を喚起し、活動の質を高められると考え、学習面での効果的な支援方法の追究を研究の中心にすえる。
特別な支援を必要とする生徒及び支援方法・内容を明らかにし、指導の工夫を追究することが生徒一人一人の自己肯定感や自尊感情を高めることにつながると考え、研究のねらいとした。
2 研究の概要
1 特別支援教育への理解
2 発達障害への理解
3 交流及び共同学習・校内副籍の実践
4 選択ベイシックコースの実践
5 副籍モデル事業の実践
6 外部機関との連携
3 研究の流れ
平成16年度
(1) 特別支援教育に関する教員の意識啓発
(2) 通常の学級の教員による心身障害学級への授業参加
(3) 対象生徒向けの補習教室の実施
(4) 通常の学級の諸活動に心身障害学級生徒が参加
平成17年度
(1) 学校心理士の授業観察による対象生徒の検討
(2) 選択授業でベイシックコースを設置
(3) 心身障害学級生徒の通常の学級への副籍の実施
(4) 南大沢学園養護学校生徒との副籍モデル事業の実施
平成18年度
(1) 学校心理士の授業観察による対象生徒の検討
(2) 選択授業ベイシックコースの充実
(3) 心身障害学級生徒の通常の学級への副籍の拡大
(4) 八王子養護学校生徒との副籍モデル事業の充実
※対象生徒とは特別な支援を必要とする生徒であるが、 本研究では学習活動が停滞する生徒も含めている。
4 研究の基本的な考え方
特別支援教育とは、本来、学習・生活全般の支援が重要であるが、本研究においては、学習面の支援に重点をおいて、障害のある生徒だけでなく、学習活動が停滞する生徒への支援も含めた研究を進めてきた。
(1) 学校生活の基本は学習活動である。効果的な学習支援を進め、分かる喜びを味わわせ、成就感をもたせることが、学校生活全般の意欲を喚起させることになる。
(2) 障害のある生徒への個別支援と、学習活動が停滞する生徒への個別支援に関する指導の工夫を追究することにより、特別支援教育を学校全体の課題としてとらえることが容易となる。これにより、教員の意識啓発が進み、生徒一人一人の個に応じた教育を進展させることができる。
5 研究の内容
(1)特別支援教育への理解
@ 教育委員会指導主事による研修会
A 都教育相談センター相談員による研修会
B 本校の対象生徒の現状分析
(2)発達障害への理解
@ 通常の学級の教員が心身障害学級の授業に参加
A アンケート調査による実施状況調査
(3)通常の学級と心身障害学級との交流及び共同学習
16年度
@ 授業交流
第1学年社会、英語への授業参加(2名)
A 昼食交流
心身障害学級の昼食に第1学年生徒が班単位で参加
B 朝の学活への参加検討
17年度
@ 副籍の実施(校内における副籍)
ア 当該学年の学級に副籍を置き、週1回、朝の学活に参加
イ 副籍学級の授業(社会、英語)に参加(2名)
ウ 第3学年進路指導の時間に副籍学級へ参加
エ 儀式(卒・入学式)参列の際、副籍学級へ参加
A 昼食交流
心障学級の昼食に第1学年生徒が班単位で参加
18年度
前年度活動の継続、発展
ア 副籍出席簿の改善
イ 朝礼、集会の際も副籍学級へ参加
ウ 学年集会、学年行事への参加
(4)選択ベイシックコース
16年度
補習教室の実施
対象生徒に、朝・昼休み・放課後
有志教員、6組指導補助教員が実施
17年度
<特別支援教室の設置>
@ 選択授業の1コースとしてベイシックコースを設置(各学年)
A 受講生徒の決定
ア 保護者への啓発
イ CEセンターの学校心理士との連携
ウ 希望者の募集と保護者の承認
エ 個別支援計画の作成
B 形態
ア 教科:数学、英語、国語
イ 第1学年 週1時間
第2学年 週2時間
第3学年 週2時間
ウ 外部人材(指導補助、インターンシップ)を活用
18年度
@ 17年度の継続、発展
A 対象生徒の決定
ア 学年職員での検討
イ CEセンター学校心理士による授業観 察を十分に行った後にコンサルティングを実施
B 指導体制の充実
数学講師を核にして、外部人材を導入
さらに他教科の教諭も組み込む
C 基礎コースとの入れ替えを可能にする
(5)副籍モデル事業
17年度 南大沢学園養護学校
@ コーディネーター間の連携
A 交流活動
学校便り等の交換、掲示
18年度 八王子養護学校
@ コーディネーター、学年職員間の連携
A 交流活動
ア 副籍学級の決定
座席設定、学級名表に掲載
イ 文化祭当日に登校、紹介
ウ 学校便り等の交換(本人が来校した際 に手渡し)
(6)外部機関との連携
@ NPO法人CEセンター
ア 教員への研修、意識啓発
イ 対象生徒の検討
授業観察、学年会でのコンサルティング、保護者との面談
A 養護学校
本校生徒の成長
6 生徒の感想
(1) 2年女子
はじめはベイシックに入るのに少し嫌な気持ちがありました。数学なんて大嫌いだったのですが、数学が分かるようになって楽しくなってきました。将来役立つことや数学への見方も変わり、好きになりました。
(2) 3年男子
今までの選択授業と違い、とても充実した時間だったと思います。普通の数学の授業と違うところは、分からないところを分かるまで先生に聞けることです。普段は授業を止めてしまうので先生にあまり聞けなかったことも、周りを気にせず質問できるところがとてもよかったです。
(3) 3年女子
とても分かりやすく教えてくれるので、ベイシックを選択してよかったと思います。最近では、少しずつですが解けるものも増えてきた気がします。家でも復習するのですが、いつも、覚えている問題がスラスラできるのでうれしく思っています。
(4) 2年女子
2年間やりました。最初は嫌々やっていたけど、UP学習(中学生の学習)をやり始めて私は楽しいと思った。UP学習は1年からあり、だんだん進んでいくにつれて自分でいろいろ解けるようになった。ベイシックは先生方が一人一人にちゃんと分からないところを教えてくれてとても分かりやすかった。ベイシックで勉強したことで、授業が分かるようになった。
(5) 3年女子
2年生になってベイシックの数学をやってみて、テストの点が上がったり、問題がすぐに解けるようになった気がする。ベイシックに入って自分が進歩したと思う。1学期に符号が苦手だったけど、ベイシックで復習したり分からないところをもう1回やったりして覚えたと思う。
(6) 2年男子
去年に比べて加減乗除ができるようになった。
7 研究の成果と課題
(1)研究の成果
@ 特別支援教育全般に関する教員の意識が向上した。
A 外部機関との連携により、対象生徒を明らかにし、支援の方向性を探ることができた。
B 個別指導を行うことにより、活動への意欲を喚起することができた。
C 生徒の実態に応じた指導を行うことにより、分かる喜びを実感させ、自己肯定感や自尊感情を高めることができた。
D 養護学校生徒の副籍を進めることにより、対象生徒の社会性を向上させることができた。
E 養護学校生徒の副籍を進めることにより、本校生徒の共生の意識を向上させることができた。
(2)今後の課題
@ 対象生徒の検討及び保護者の理解を進めるために効果的な外部機関との連携を図る。
A 効果的な個別支援計画の改善を図る。
B 個別支援にかかわる人員を確保する方策を探る。
C 小学校との連携を深め、9年間の系統的な個別支援の方策を探る。
D 学習支援を基礎に、生活全般にかかわる特別支援教育の方策を探る。
E 副籍活動を進め、生徒の実態に応じた効果的な活動の在り方を探る。
F 特別な支援を必要とする生徒の中には友人関係をつくることや集団の中で活動することが苦手な生徒がいる。このような生徒への対応については本研究で触れることができなかった。今後検討する必要がある。